第14回
       2月29日掲載
解夏

 映画「解夏」を見ました。ベーチェット病に侵され、失明していく青年と、彼を愛する恋人のお話。愛しているから別れようと言う彼と、愛しているから彼の眼になりたいと言う彼女純粋な愛。堀辰雄の『風立ちぬ』も、結核に侵され、死を前にした婚約者との、凝縮された愛を描いている点で、「解夏」と似ています。芥川龍之介とその妻も、好きという気持ちだけで結びついた純愛でした。しかし、彼の周りにはエゴイズムを孕む愛が渦巻いており、初恋は伯母の反対で断念させられ、結婚生活も封建的な家族制度に縛られたものでした。彼は、エゴイズムを孕む愛に憎しみを感じつつも、その生活を受け入れ、一方で自由を切望していたのです。エゴイズムを孕む愛とは、利害打算を内包するもの。彼は、ビゼーのオペラ「カルメン」を見、主人公カルメンの、道徳的束縛をはなれた利己的な恋愛の仕方に、憎しみを感じました。彼もまた、カルメンのような愛人に翻弄され、苦しんでいたからです。自らも『カルメン』という作品を書く程、それは刺激的なオペラでした。利害打算を内包する愛は、現代でも決して少ないとは言えませんよね。

 私達は、求める愛に忙しくなりがちですが、「解夏」や文学作品は、与える愛の大切さを教えてくれます。愛する人のためになる事が、同時に、自らの喜びとなれば、それは幸せというものでしょう。人は誰しも、何かしら不安を抱えて生きているのではないでしょうか。エンディングで流された、さだまさしの「その手を離さないで、不安が過ぎ行くまで」という歌は、皆の願いでもありますよね。

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