|
宮澤賢治は、『銀河鉄道の夜』の創作過程で、こんな場面を描いていました。カムパネルラと別離し、慟哭するジョバンニの前に、一人の大人が現れます。その人はジョバンニに、カムパネルラは遠くへ行ったと告げ、自分の切符をしっかり持ち、人々の本当の幸福を探す勉強をせよと諭します。そして、人間は、各々自分の神様こそ本物だと主張し、議論をして勝負がつかないが、勉強して、真偽を分ける「実験」の方法さえ決まれば、信仰も化学も同じになると語ります。
賢治が愛好したベートーヴェンは、天体を動かす宇宙の法則が人間にも内在すると考えていました。プラトンやカントの哲学も同様です。リルケも、「見えざる」本質を信じていました。
リルケやプラトンの思想は、バッハの音楽にも見られます。彼の音楽は、数学と哲学と神学を含んでいます。バッハのフーガは、幾何学的に構成されています。数学者の砂田利一氏は、幾何学を「宇宙空間の法則」に通じるものと捉えています。セザンヌは、自然を「円錐」と「球」と「立方体」で作られていると言ったそうです。レンブラントも、絵を通して「人間の原型」を求め、「聖書の精神」を表したと言われています。この他、見えざる四次元空間の存在や、人間が宇宙によってデザインされたものであるとする科学者の見解については、前にも書きました。
そういえば、ノーベル賞受賞者の田中耕一氏が、科学は未だわからない事だらけだと言っていましたね。賢治の言う本当の幸福を見出す「実験」とは、全ての学問が、見えざる一なる法則を証明することなのかも知れません。
|