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「第九」の季節になりましたね。ベートーヴェンの生涯は、苦しみ多きものでした。レルシュタープという人は、ベートーヴェンの「優しい眼と、その眼が示している深い悲しみ」を見ると、泣き出したい気持ちを必死で我慢しなければならなかったと言ったそうです。ベートーヴェンは、音楽家の命である聴力を失い、また、失恋の痛手によって、一時は遺書まで書きました。でも、彼は死を選ばなかった。
ジュリエッタ・グィチャルディとの失恋から生じた危機の後、彼の机上にシュトルムの『教えと教化』という本が見出されます。彼は、その中から、自然は「心の学校」であり、己の義務を明らかにしてくれる、どんな幻滅にも落ち込まない知恵をそこで探したい、といった書抜きをしました。また、「あわれ、ただ美しき自然を眺めて避けがたきことを観念したまえ」と言い、自然の本質から、人間社会でも生かせる道徳を学び、「避けがたき」運命にただ絶望するのではなく、それを受け入れて克服する生き方を選びました。失恋したからといって、ストーカーになったり、殺したりはしなかったのですね。
晩年に作曲された「第九」は、宇宙の始まりから、この世の3つの歓喜を示し、最後にそれらを全て否定して、単純で素朴な、本当の「歓喜」の調べを奏でます。それは、しだいに高らかに、最後は、喜びに満たされて駆け出して行くような、速いテンポで終わります。
生涯得ることのなかった歓喜を、自ら創り出した彼。これぞ、運命に勝った魂の姿と言えます。彼の勇気が、時空を越えて、今年も皆の心に届きますように。
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