第2回

10月25日掲載

山学校

 癒しブームの昨今、皆さんはどうやって癒されてますか?私は、近くにある泉ヶ岳という山が好きで、よく出かけます。森に入ると、木の葉のそよぎ、小川のせせらぎ、鳥のさえずりなど、豊かな自然の音響に包まれ、心が癒されるのを感じます。風の強い日など、ゴーゴーと、まるで「風の又三郎」に会えそうな予感までしたりして。時には、枝から蛇が誤って落ちるのを見、「蛇も木から落ちるか」と、妙に納得しながら、坂道を登るのも心地よいものです。高台に立って、青く広がる空を眺め、風の音だけを聴きつつ、ゆったりと飛翔する鳥達を見ていると、自分も無窮の大自然の一部なのだと気付かされます。かの有名な作曲家ベートーヴェンは、ウィーン郊外のハイリゲンシュタットの森を散策する中で、自然とのふれあいを通して、持病や失恋の痛手から救われたと書いています。『遺書』までしたためた彼が、そこで大きな癒しを与えられ、「交響曲第6番《田園》」に自然への感謝を表したことはよく知られています。ベートーヴェンは、自然を「心の学校」と捉えていました。作家堀辰雄の『美しい村』という作品にも、自然のそういう作用について描かれています。

秋の日暮れは早く、キラキラと森を輝かせていた太陽が、空を茜色に染めて沈みゆく様は、神々しく、目を奪われるものです。山へ行くと、嬉しい事は2倍になり、悲しい事は半分になります。何か自分を客観的に見られるような気がして。そんな山学校に感謝しつつ、暗くなった坂道を下りて来ました。



最新のコラムへ戻る
第1回 第2回 第3回
第4回 第5回 第6回
第7回 第8回 第9回
第10回 第11回 第12回
第13回 第14回 第15回
第16回 第17回 第18回
第19回 第20回 第21回
第22回 第23回 第24回
第25回 第26回 第27回
第28回 第29回 第30回
バックナンバー